毎年夏になると、各地の昆虫観察会で、虫好きの子供たちと一緒に森の中を歩きます。
私にとって、普段の仕事を離れて気持ちをリフレッシュできる楽しいひとときです。
そんなときに必ずと言っていいほど、これナニ!!!??? と聞かれるのがザトウムシです。小さな豆粒のような体にとんでもなく長く細い足。薄暗い林の中でゆらゆらと歩くその姿はまるで異次元の生物のようで、目の前に見ていても現実の存在とは思えないほどです。初めて見た子供たちが驚くのもよくわかります。
ザトウムシは、別名ザトウグモとも呼ばれるように一見クモに似た生き物ですが、分類上はかなり違い、ダニなどに近いそうです。最近の研究では、むしろヒヨケムシに近いという説もあります。日本には80種類くらいいるそうですが、詳しいことはわかりません。
体のサイズは大きいものでも1センチ程度ですが、足の長さはその10倍以上あります。面白いのは目で、頭と胸、腹、すべてが一つになった丸い体の背中のあたりに黒いのが2つ、ちょこんと飛び出て並んでいます。こんな姿で、こんな歩き方で、いったい何を食べて生きているのかと不思議に思いますが、基本的には肉食寄りの雑食性のようで、ネットで調べたら昆虫ゼリーを食べるようなことも書かれていました。

今回、ここに書くためにザトウムシのことを調べていて、もうひとつ面白いことがわかりました。宮崎駿のアニメ「千と千尋の神隠し」に出てくる「釜爺」のモデルがこれだというのです。私もこのアニメは何度も見ましたが、釜爺はクモだと疑いなく思い込んでいました。それで改めて見てみると、確かにあの黒メガネはザトウムシのようです。千と千尋にゆかりの生き物となればもっと注目を浴びてもよかったと思うのですが、これまでにそれが話題になった記憶はありません。あのアニメが世に出てすでに11年。今となってはもう名を売るチャンスを逃してしまったようです。まあ、本人は、どうでもいいよと言いそうですが。
でもそれは別にしても、ザトウムシの姿の異様さと動きの面白さ、それらが醸し出す適度に不気味な雰囲気は、とてもペットに向いているように思えます。この先飼育法が確立すれば、いまのカブトやクワガタなどの飼育ブームの次に来るのは、もしかするとザトウムシかもしれません。
 ところで、このすばらしい生き物に会うのはそんなに難しいことではありません。近くの雑木林に出かけ、遊歩道を歩きながら、木の根元や薄暗い茂みの中などを注意して探せばたぶん見つけられるでしょう。深い海の底や熱帯のジャングルの奥まで行かなくても 家の近くで手軽に味わえる異次元生物ウォッチングを、この夏楽しんでみてはいかがでしょうか。

(ミ)

※このコーナーのイラストをお願いしている高橋桃子さん(旧姓 石井)が、生き物をテーマにしたホームページを立ち上げられました。アドレスはhttp://sky.geocities.jp/nyokonyoki/です。