5月中旬から6月にかけての海岸を歩いて見ます。夏の混雑に比べ、人通りもまばら。なんとなく寂しいような感じがしますが、目を転じて砂浜の植物たちに注目すると、そこはまさに百花繚乱、高山のお花畑にも匹敵するみごとな光景が広がっています。
白い花のハマハタザオ、ハマボウフウ、黄色い花のウンランやハマニガナ、紫や青色系ではハマエンドウ、イソスミレ、それにコウボウムギ、コウボウシバといった地味な種類も。
 それぞれ強風や乾燥、移動する砂といった厳しい環境に耐えながらいっせいに今花をつけています。上越の砂浜も環境の変化により急速に減りつつありますが、まだところどころで胸踊る初夏の風景に出会うことが出来ます。

 今回とりあげるカワラヨモギは、遠目には砂浜に溶け残った雪の塊といった感じにかたまって生えています。
この時期はまだ花をつけていませんが、近くで見る銀白にグリーンの混じったような「わかみどり」色の新葉は実に繊細で、見れば見るほどに美しく、もっと観賞用に栽培されても良いのになどと余計なことを考えてしまいます。
 ところでその白銀色の塊に寄り添うように濃い藤色の小花を穂にびっしりつけた不思議なものがニョッキリと顔を出しているのを見ることがあります。うっかり目にはカワラヨモギの花のようにも見えますがそうではありません。これこそカワラヨモギの根に寄生するハマウツボという植物。

 その穂の形が昔弓の矢をいれる「うつぼ」という物になぞらえて付けられた名だそうですが、葉も茎も無いようなこの植物、秋に変わった形の花をつけるナンバンギセルや高地にあって強精の民間薬として名高いオニクなどと同じ種類。この仲間にはすべて緑の葉や茎と言った栄養器官がまったくなく、養分は宿主の根から直接とりこんで生活しています。
 いってみれば花の部分だけが地上に出ているという異色の植物です。ところで、言うまでも無く花は植物のレッキとした「生殖器官」、もしこれが動物だったとしたらどうでしょう……とんでもないことになってしまいますよね。

閑話休題。
 やがてハマウツボは細かい種を撒き散らして枯れ、カワラヨモギも何事も無かったように元気に葉を茂らせ成長して行きます。見渡せば、けっこうな数のハマウツボが点在するにもかかわらず、カワラヨモギの株が弱っているようには見えません。
 ここでハマウツボは栄養をもらっているのはわかるが、カワラヨモギには何の得が….. などと考えるのは人間のさかしらというもの。自然界には寄生者と宿主などという対立するような考え方は存在せず、ただ「共生」という文字通り「共に生きてある」という言葉ですべてのことがらが説明されるように思えてなりません。 (ハ)