リンドウ   草紅葉の中の青い星

時は晩秋、枯葉が舞い、霜が降りる季節です。

小春日和に誘われて山沿いの道を歩いていると、日増しに濃くなる草紅葉のなかから青紫色の花を着けているリンドウに出会ってたまらなく嬉しい気分になることがあります。秋の七草にこそ漏れたとはいえ、代表的な秋の草花リンドウ、道端の一度刈り払われた後に成長した株などでは、初冬になって咲くものも見かけます。花屋さんには7月ごろから店頭に並びますが、これは日照や温度など調節して作ったもの、エゾリンドウという種類から改良されたものだそうです。花も大きく、立派ですが「作りもの」の感じは否めません。リンドウの仲間は種類が多く、日本だけでも20種類ほど記録されています。高山や限られた土地に分布するものが多い中で、リンドウ、エゾリンドウなどが広く見られる種類といえます。花の色も青色系が大半ですが、うすい黄色を帯びたもの、白いものなどさまざまで、春に花が咲くハルリンドウ、フデリンドウといった種類もあります。

不思議に思ったのは、目に付く花でありながら、方言の意外に少ないことです。植物方言の本にあたってみますと、筒型の花をヒョウタンやタゴ(桶)に見立てたものが和歌山県を中心に記録されているのが目立つ程度、全国的には大変少ないとの感じを受けました。このような場合二つの例が考えられます。ひとつは移入されて日が浅く名前がつけられるにいたっていない場合。もうひとつは反対に古くから標準の名前が普及し世間に広く流布している場合です。「出雲国風土記」というとんでもなく古い書物に産物として出てくる本種の場合は、おそらく後のほうの理由ではないでしょうか。リンドウの名はもともと漢名「竜胆」の音読みでリウダンがリンドウに変化したものとされています。漢字が示すように根に苦味成分を含み健胃整腸の目的で薬用にされ、平安時代に書かれた「本草和名」という薬草名の解説本にも載っていますが、そこにわが国古来の呼称として、エヤミグサ、ニガクサの名前があるのも興味をそそります。当初は薬としての関心が主だったリンドウですが、それから80年後の紫式部や清少納言の活躍したころには、もう花の美しさを賞でて庭や、まがきに植えられるようになっていたようです。清少納言がリンドウを深く愛したであろうことは、枕草子に書かれた文章にはっきりと表れており、日本には1000年も前から続く花の文化があるということは真に世界に誇るべきことではないかと思います。        (ハ)