毎年梅雨の季節になると、その雨を待っていたように60cmほどの花茎をぐんぐんと伸ばし、釣鐘型の大きな花をつけるホタルブクロ、栽培種のカンパヌラなどと同じなかまで、このあたりではちょっとした山手の雑木林の縁や草原、海岸に近い松林の中などに多く見られます。上越近辺のものはヤマホタルブクロという東北南部から近畿地方の山地に広く見られる種類です。通常のものにくらべ、全体毛が多く、がくにそっくり返る部分がない….等の違いが有ります。花の色には変化が多く、釣鐘の上部にさっと紅を刷いたようなものや、全体に美しいロゼワインのような色になるものなどさまざまですが、釣鐘の内側にはえんじ色の細点が入ります。雨の雫にぬれてうつむいた姿になんともいえない風情を感じさせられる花です。

人目につく花だけに方言も多く記録され、その数は120以上にも達します。咲く季節に関連したアメフリバナ、アメップリ、花の形から連想されたと思われるトウロバナ、チョウチンバナなどの名が長野県を中心に数多く採集されています。ホタルグサ、ホタルバナなどの名もありますが、これはちょうど咲く時期がホタルの飛ぶ季節と重なるためのようです。
ホタルブクロの名について、牧野図鑑などには「子供がホタルを捕まえて、包む。」とあり、疑う余地もないような書き方です。でも本当にそうでしょうか? 私の周りにそのような体験をした人はおりませんので、実際に子どもの頃、そのようにして遊んだ人がいたら教えてもらいたいと思うのですが、もし捕まえて入れたとして、ホタルが逃げないようにするのが大変で、持ち運びにも不便な気がします。これに関しては、足田輝一さんの「草木夜ばなし・今や昔」という本に別の本からの引用として「ホタルはこの花に入れるのではなく、ネギの枯れた葉に入れるのだ。」 と書かれていて、こちらのほうが現実的なような気がします。案外、この説はホタルブクロの名前から生まれた大人のロマンチックな連想のような感じがしないでもありません。

ではもうひとつの語源説、これも昔からの説ですが、「火垂る袋」に由来するというもので、江戸時代の辞書類などに出る 「火垂る」はすなわち提灯を指す言葉で、花の形からの連想です。いまでも仙台付近では提灯のことを ほたるぶくろ と呼ぶとのことです。
さて、蛍袋と火垂る袋、この文を読まれている方々は、どちらのほうが真実に近いと思われますでしょうか。

(ハ)