夢の亀から悪者へ ミシシッピーアカミミガメ



あまり聞きなれない名前かと思いますが、ペットショップなどで売られているおなじみのミドリガメの正式な名前(標準和名)です。元々は北アメリカからメキシコ北部にかけてすんでいたものですが、ペットとして世界中に輸出され、その後逃げ出したり放されたりしたものが各地で野生化しています。日本でも同様で、今では数が増えて自然の中で唯一ふつうに見られる亀になっています。ただ、その姿はペットショップで見る子ガメとはずいぶん違い、色も地味なオリーブ色で、和名の由来になっているほおの赤紋がわずかにその面影を残すのみなので、ちょっとミドリガメとは気づかれないかもしれません。

私は子供の頃から亀が大好きで、中学生の頃には、庭に作った囲いのなかでクサガメとイシガメをたくさん飼っていました。イシガメは、当時金谷山に行って田んぼの周りを探せば子ガメがいくつも採れたので身近な存在でした。亀の中で一番好きだったスッポンはその頃は図鑑で見るしかない憧れの存在で、少し後になってから親戚の叔父さんに頼んで東京のスッポン料理店から生きたものを分けてもらったことが懐かしく思い出されます。

そんな私がミドリガメと初めて出会ったのは、かつて上野の不忍池の畔にあった上野水族館の爬虫類コーナーでした。外国のいろんな亀が展示されている中に、鮮やかな緑に黄色の模様、ほおには赤色の紋をもつ小さな亀がいました。まるで作り物のような明るい配色で、亀といえば世界どこでも黒か茶色だと思っていた私にとって、それはまさに衝撃でした。

それ以来、いつかこの亀を飼うことを夢見ながら、そのへんで売られているわけもなく半分諦めていたところに、なんとある菓子メーカーが生きたミドリガメの当たる懸賞を始めたのです。チョコレートの包み紙を集めて送ると抽選で当たるというやつで、たしか“アマゾン”のミドリガメという謳い文句で珍しさを煽っていました。ご想像の通り、私は毎日そのチョコレートを買って、食べて、包み紙を送り続け、結果2匹のミドリガメを手に入れることができました。いまなら動物愛護協会からクレームがつきそうな企画でしたが、私にとっては最高のプレゼントで、それが送られてきた時の感激は今でも忘れられません。

その後ミドリガメはペットとして人気が出てたくさん輸入され、あっという間に野生化して増殖し、いまでは在来の亀を脅かす悪者にされています。でも、改めて言うまでもないことですが、悪いのはミドリガメではなくて私たちです。そして現在、他にも同じような問題が山ほど起きています。

すでに数多くの外来種が入り込んでしまった日本の自然の生態系を元に戻すことは、残念ながら不可能でしょう。でも、それで日本古来の生き物がいなくなってもいいわけはありません。トキのように手遅れになってしまう前に、少しでも多くの在来種が消えずにすむように、私たち一人一人ができることもきっとあるはずです。              (ミ)