不思議なハチ ゴキブリヤセバチ

今回は変わったハチをご紹介します。

ゴキブリヤセバチ。おそらくほとんどのみなさんは初めて聞く名前だと思います。名前からゴキブリに似たすがたを想像されそうですがそうではありません。名前の由来は、ゴキブリの卵に寄生する「やせたハチ」という意味で、かたちは前半分がふつうのハチで、その後ろに申し訳程度にほんのちっぽけな下半身がくっついているといった感じです。ハチのなかまは日本だけで約4,500種類が見つかっていますが、それらを見渡してもこんなかたちをしたハチは他にいません。

こんな変わったハチですが、住んでいるところはと調べてみると、なんと世界中にいると書かれています。確かに昆虫は環境への適応力に優れ世界中で最も繁栄している生物ではありますが、それにしても、一つの種類で世界中に住んでいるなどというのはめったにありません。他に身近なところでは、嫌われ者のハエ(イエバエ)やノミ(ヒトノミ)、衣類を食い荒らす害虫ヒメマルカツオブシムシなどの分布がやはり世界中となっています。彼等に共通することといえば、人間の生活と大きな関わりを持っているということでしょう。

これらの昆虫は遠い昔それぞれの故郷から人といっしょに海を渡り、長い年月の間に世界中に住みかを広げたのに違いありません。そうなると、ゴキブリヤセバチが世界中に分布している理由についても答えが見えてきます。もちろんこの種自体は人との関わりを必要としていません。しかし、その宿主(幼虫の餌)であるゴキブリはと言うとこれは人間との関係大有りです。調べてみたところ、台所などでよく見られるチャバネゴキブリの分布はやはり全世界でした。ゴキブリが彼等の起源とされる熱帯地方から世界への旅を始めたとき、ゴキブリヤセバチもいっしょにくっついて旅に出たのでしょうか。ゴキブリにとってはいい迷惑だったでしょうが。なにか意味があるに違いないその不思議なかたち、どこからどんな経路をたどってこの日本にやってきたのか、いろいろ想像していると楽しくなります。

私は以前からこのハチに会いたいと思い機会があると探していましたが、なかなか見つけることができませんでした。やっと出会えたのはつい最近で、牧村の山中で道端に積まれた薪の周りを数頭で飛びまわっていました。多分薪の隙間にゴキブリがいるのでしょう。ゴキブリヤセバチはハネを広げてやっと1.5センチの大きさなので見つけるのはそう簡単ではありませんが、飛び方はそれほど速くなく、変わったかたちで他のハチとは一目で区別がつきます。

今の時期、山の中に積まれている薪やシイタケのホダ木の周りは、色鮮やかなカミキリムシや小型のタマムシ、宝石のように美しいセイボウ(ハチのなかま)などの昆虫でとても賑やかです。皆さんも、どこかで積んである薪を見かけたらそのまま通りすぎないで、ちょっと寄り道してのぞいてみてください。普段気づかずにいた昆虫たちのさまざまな美しさにきっと驚かれることと思います。         (ミ)