驚くべき成長の速さ・・・
珍しく長期予報通リの少雪となった今年、例年よりかなり早く冬囲いを外してもらいました。
広くなった庭を眺めていますと茶色一色の地面に点々と白っぽい色の草の芽生えが見えました。その細かい切れ込みの入った葉から、ムラサキケマンの芽とわかりましたが、その後の成長の速さは驚くべきもので 10 日後には立派な株となり、あとは赤紫色の花穂が立ち上がるのを待つばかりの様子です。

スプリングエフェメラル(春の儚い命)
ムラサキケマンはケシの仲間の越年草で、たぶん高田のまちなかで一番普通に見られる野草の一つでしょう。早春に細長い感じの赤紫の小花を房状にびっしりつけて目立ちます。
そして 5 月のはじめ頃には早くも 1.5mmほどの極小の種子の入ったさやをつけ、その弾ける力で種子を撒き散らします。
地上に落ちた種子は蟻の仲間によってさらに拡散され(蟻の好む物質をつけているため)、秋までに発芽し小さな芽のままで冬越しし、早春の陽光とともに成長を始め、周りの草木が葉を茂らせる前に一生を終える…、これは春早く花をつけるいわゆる「スプリングエフェメラル(春の儚い命)」と呼ばれる植物群に共通した特徴です。

毒!
「華蔓」という仏堂を飾る装飾からとった優雅な名を持った本種には全草にアルカロイドという有毒物質(毒の種類は違いますがほとんどのケシ科植物に含まれています)が含まれていて、食べた場合吐き気や全身の痙攣を引き起こすこともあるそうで注意が必要です。
幸い死亡に至る例は報告されていませんが、茎を折ると白っぽい乳液が出て少し不快な匂いがします。

タブー、迷信
子供の頃の思い出ですが、この花をカジバナと呼び、摘んだりして遊ぶのは私達の仲間内ではタブー.となっておりました。
この花を家の中に持ち込んだり縁の下などにおいておくと、その家が火事になるというものです。
取るに足らぬ迷信なのですが、カジバナという名付けが子供に出来るはずもなく、この草が有毒であることを広く知らしめる意味で言ったものかもしれないな と今では思うようになりました。

地元でしか知られていない?
植物方言辞典のような本にはカジバナの名前は思ったより広がっておらず、山形県、刈羽郡、柏崎の一部くらいしか記録されていないようですが、当地ではポピュラーなものであり、もっと広い範囲で使われていたと考えてよいでしょう。同じカジバナの名を持ち、強い禁忌を伴う植物にリョウブがあって、理由は不明ですが調べる価値がありそうです。

毒草が餌
ところで、この毒草を食べて育つ蝶がいるのをご存知でしたか。アゲハの仲間で氷河時代からの生き残りと言われるウスバシロチョウがそれで、5 月初旬から出現し、ちょっとした山手の雑木林の間をひらひらと飛んでいる姿を見ることが出来ます。

(ハ)