先ずは左のイラストをご覧ください。これは何だと思いますか。多くの皆さんはきっと貝細工だと思われるでしょう。
実は自然のままの本物の貝で、フィリピン周辺の海にすむセブチリメンクマサカ(Xenophora granulosa)という種類です。
このなかまは、成長しながら周りの貝殻や石ころ等を自分の殻に埋め込んでいく習性があり、その結果こんな変わった姿になります。

クマサカという名前は、周りのものを頂戴してしまうということから、平安時代の大泥棒、熊坂長範に因んで付けられたそうです。

クマサカガイのなかまは日本にも何種類かすんでいます。
その多くは本体が見えないくらいにいろんなものをくっつけていて、そうすることで自身の姿をわかりにくくして外敵から身を守るといわれています。生息環境によって、貝殻だけとか、石ころだけとか、くっつけるものが決まっていることも多く、貝を付けているものは貝類学者、石を付けているものは鉱物学者というニックネームもあるそうです。

これだけなら単に面白い貝ということで話しが終わってしまうところですが、今回ご紹介するセブチリメンクマサカの場合は、まずその美しさに驚かされます。透き通るような白い殻にきれいな巻貝が一定間隔で配置されたその姿はまさに自然の芸術品です。
周りにあるものをただ手当たり次第にくっつけるだけならこうはならないはずで、ちゃんと材料も意識して選んでいるように思えます。では、それは何のためなのでしょうか。多分人の目を楽しませるため、ではないでしょうが、この貝に限らず自然界には本当にそうとしか思えないようなすばらしい生き物がいっぱいいて、いつも驚かされることばかりです。

ところで、この貝を見ていてふと、ミノムシのことを思い出しました。
ミノムシの幼虫を巣から引っ張り出してきれいな紙片やビーズなどと一緒にしておくと、それらを綴った美しい巣ができあがるというのを、皆さんも子供の頃にやったことはありませんか。もしクマサカガイの仔貝を採ってきて同じようにして育ててみたら、とんでもなく変わった貝が作れそうです。自然に対する冒涜と言われるかもしれませんが、貝と人との合作、ちょっと見てみたい気もします。

(ミ)