カイロウドウケツは海にすむ海綿の一種で、暖かな海の砂底にサボテンのような感じに生えています。
とても面白いことに、ある種のエビがその籠のような体内にペアですみつき、一生外に出ることなく寄り添って暮らすのだそうです。
そこから、偕老同穴の故事に因んで名前がつけられ、エビの方にはドウケツエビという名がつけられています。まずこの名前のセンスの良さに驚かされますが、英語の名前はというと「ヴィーナスの花籠」だそうで、そちらのほうも素敵です。

生きているときはそれほど綺麗には見えませんが、表面の付着物などを取り去ったあとの骨格は純白で、まるでガラスの繊維を編んで作った精巧な工芸品のようです。と言っても生き物ですから、ただそう見えるだけだと思ったら、なんと成分も本物のガラスなのだそうです。

生物がガラスを作り出す。

信じられないことですが本当です。
そして、これだけ科学が発達した現在でも、常温でガラスを作ることはまだ人間にはできないのだそうです。
それだけでもすごいのに、カイロウドウケツの造形は正に芸術で、世界にはとんでもない生き物がいるものだとつくづく感じさせられます。

私が最初に見たのはもう40年位前で、場所は鹿児島県の観光地の土産物屋でした。
大きく立派な額に入れられ、何やら有難い文句も添えられて、そして当然のようにすごい値段が付けられていました。
もう欲しくてたまりませんでしたが、値段もさることながら、今のように便利な宅配便などない時代、そんなものを背負って長い旅を続けるわけにもいかず、涙を飲んで諦めました。

その後 船で南の島をまわっていて、石垣島の雑貨店を兼ねた小さな土産物屋で再びカイロウドウケツに出会いました。前に見たのとまったく同じものでしたが、今度はセロハン窓のある細い紙箱に入った状態で無造作に積み上げられていて、値段はなんとあの時の30分の1でした。
ちょうど旅も終わりに近づいていた頃で、迷うことなくあるだけ買占めて家に持ち帰りました。
そのほとんどは人にあげてしまいましたが、1つだけあった、エビのハサミが中に残っていたものだけは今も手元に残してあります。

(ミ)