ヒシという水草、見たことがありますか? 以前は市内の池や沼、いたるところで普通に見られたものですが、埋め立て、水質変化などのせいかほとんど姿を消してしまいました。
かっては高田城址の内堀にも見られたほどだったのですが。

ヒシは一年草の水草です。6 月ころ池の底に沈む種から発芽した芽は.ぐんぐんと水面に向かって伸び、文字通りギザギザのある菱形の葉を次々に放射状に広げて行きます。
葉には長く膨らんだ柄が付いていてこれが浮きの役目をしています。ちょうどホテイアオイの葉と同じような感じです、ヒシの場合は葉が水面より高くなることはありませんが。
一度葉の成長が始まるとそのスピードの早いことはまさに驚異的。一月もしないうちに池全面を覆ってしまうほどです。やがて白いカップのような花を数個葉の付け根から出る花茎の先に咲かせます。花は新しい葉が広がるに連れて次々と咲き、やがて両端に棘のような突起のある果実になって水中に沈みます。

この果実は日本だけでなく広く東アジアの国々で食用とされてきました。アイヌの人たちにとってはとりわけ大切な食材で、これを採取するときはあらかじめお祭りをして神に祈りを捧げた後、舟を出したそうです。アイヌ語ではペカンペといい(水・の上・にある・もの)の意味だそうで福岡イト子さんの「アイヌ植物誌」に出ております。
食べ方は秋に完熟した実を採ってそのまま茹でるか、乾燥して長期保存されます。万葉集にもヒシの実を採る歌が載っています。(巻七・一二四九)

ところで、この近辺で今は全く忘れられたヒシの実食、わたしには二回ほどこの実を食べた記憶があります。
最初は小学校低学年のころだったと思うのですが、家の前にリヤカーにヒシを満載にして売りに来た人がいて、祖母がそれを買って茹でてくれました。味は甘くないクリの実と言った感じでホクホクとして大変美味しかった
のを覚えています。二回目は高校の夏休み。生物部でお堀でプランクトンを採集観察するためボートに乗ったときのこと。

ヒシが浮いているのを見つけてそれを採り実験室のビーカーに入れて茹でて食べたのです。はじめは尻込みしていた4,5人の部員は初めての味に大いに満足?してくれました。いまから50 年近く前の懐かしい思い出です。

(ハ)