6 月の半ば過ぎ木々の緑が深い緑に変わる頃、私の大好きなネムノキがそこかしこで美しい花をつけ始めます。
木の花としては遅咲きの部類ですが、その鮮やかなお化粧につかう刷毛のような風情ある花を愛する人は多くおられることでしょう。
枝の先に群がって咲く花は小さな筒型で目立たず、目を引くのはその紅白に染め分けられた多数の長い雄しべ。
これが私たちが普通にネムの花と見ているもので、梅雨の雨に濡れた姿もまた良いものですね。

ネムノキは北海道を除く全国に普通に見られ、成長はたいへん早く高さ10mほどの枝ぶりの良い樹になります。民俗事例として、材は軽く昔は下駄の歯やいろいろな器具に使われました。
宮崎県の椎葉村でずっと焼畑を続けてこられた椎葉クニ子さんのご本には、メンパ(炊いた飯を入れた携帯容器のこと)の材料として最適で、竹材などより水分をよく吸ってくれてご飯がおいしかった…とあります。
その他、木の皮の煎じ汁を洗髪や洗顔に使ったり、葉を干して粉にし香に焚くなどの例も各地で知られています。

ネムノキといえばその名のもとになった「葉は日暮れに閉じて朝また開く」という性質です。
このことは古くから人々の興味を引き、美しい花とともに万葉集をはじめ各時代を通じて和歌や今様、俳句などに多くの作品が残されています。
漢名は合歓木ですが、この[合歓]の文字にはもともとは男女が共寝するという意味があったようで、このため古典に出て来るネムノキの歌の多くは恋の歌に分類されるようです、現代はそうでもありませんが。

ところで、合歓木フアンの私の夢は 長塚節の歌に

「蚊帳越しにあさあさうれし一枝は 廂のしたにそよぐ合歓の木」

にあるような大きなネムノキの梢にツリーハウスを作り、花の香につつまれて眠ること…だったのですが、大径木がどんどん少なくなっている昨今ではとても無理な話ですね。

(ハ)