私はずっと以前から面白い生き物の標本をコレクションしています。
ただし、集めているのは無脊椎動物のみで、大雑把に言えば 虫やウニ、カニはOK で魚やトカゲ、鳥などは対象外ということになります。
それともちろん美しいことも大事で、そうすると乾燥しても姿が変わらないものに限られるので対象はさらに絞られてしまいます。
そんな私のコレクションの中で、数少ない例外の一つがトビトカゲです。

昔、昆虫採集をしながら各地を旅していた時、タイのバンコクの空港で帰りの便を待ちながら免税店で土産物を物色していると、壁にかかった額の一つが目にとまりました。
何だろうと近づいてみると、それは大きな皮膜で木から木へ滑空するという珍奇生物、トビトカゲの標本ではありませんか。
変わった生き物好きの私にとって、それまで本でしか見たことがなかった憧れの存在です。
でもなんかちょっと変だな、という気はしたのですが、添えてある説明書きにもFlying Lizard(トビトカゲの英名)とちゃんと記されていたので、これはすごいものを見つけたと思い大喜びで買い込みました。けっこうな値段だったと思います。
帰ってきて調べてみたら、それはトビトカゲではなく、アジのヒラキならぬトッケイ(熱帯アジアにすむ大きなヤモリ)のヒラキでした。

それにしてもこんな偽物が作られるほどトビトカゲは珍しいのかと感心したら、それも違い、トッケイの干物は元々漢方薬として売られているものだったのです。
悔しさよりも、わざわざ額にまで入れて、そんな偽物が売れると本気で思ったんだろうかと呆れてしまいましたが、でも実際に買ったまぬけがここにいるわけですから、案外いい商売だったのかもしれません。
この「にせトビトカゲ」は今も部屋の壁に飾ってあり、楽しかったあの頃を思い出させてくれます。その後手に入れることができてショーケースに納まっている本物よりもむしろこちらの方に愛着を感じてしまうのが不思議です。

(ミ)