201612-5 この地球上には膨大な種類の昆虫がいて、色も形もバラエティーに富んでいます。
珍奇な姿をしたものも数多くいますが、残念なことに変わった形の虫ほどサイズが小さくて、せっかくの魅力的な姿も虫めがねなしではよく見えないという場合が多いのです。
そんな中で、形の奇抜さと大きさとを兼ね揃えたとびきりの珍奇種が今回ご紹介するバイオリンムシです。

私がこの虫のことを初めて知ったのは、蝶の収集を本格的に始めた頃の1973年、創刊されたばかりの趣味の昆虫の雑誌を読んでいた時でした。
そこにはとても変わった虫の絵が載っていて、1頭だけしかないこの虫を最低3万円からのオークション形式で販売すると書かれていました。
その結果がどうなったのかはわかりませんが、まずその姿と金額にびっくりしました。
それから別の本で19世紀にフランスの自然史博物館がこの虫を購入するために当時の金額で1,000フランもの大金を投じたという話も知り、すごい虫がいるもんだと思うと同時に、バイオリンムシ = 金という不謹慎な刷り込みもされてしまいました。

それから数年後、蝶の採集のためにマレーシアのキャメロン・ハイランドに行ったときにこの虫の実物と出会いました。と言っても、自分で捕まえたというわけではありません。

当時その地は東南アジア有数の昆虫の宝庫とされていて、海外からも採集者が訪れていました。当然そこには昆虫を扱う商人もいて、毎晩私たちが宿でくつろいでいると虫を売りつけにやって来ました。
そこで珍しい蝶たちと共に目の前に並べられたのがこのバイオリンムシでした。
その時は蝶にしか興味がなかったのでそんなものは要らないはずだったのですが、私の頭の中には以前のあの記憶がしっかりと蘇っていました。

この虫は3種類いてこれは特別珍しいとか、日本で買えば10倍の値だとか、いろんなサイズをそろえるといいとかあれこれ言われながら、気がつくといっぱい買ってしまっていました。
なんだかすごく得をしたような気分になりましたが、でもその時はこれを自分の手で採りたいとは思いませんでした。
もしあの頃から蝶以外の虫にも興味を持てていたら。今思うとちょっと残念な気がします。

因みに、かつては大珍品だったこの虫も、その後サルノコシカケなどに集まることがわかってからはたくさん採れるようになり、金銭的な価値は大暴落しました。

ところで、バイオリンムシは東南アジアに6種類がいることになっています。
その内5種類は簡単に手に入るのですが、ボルネオ島にすむという1種類だけが正体不明です。
ネットでなんでも調べられる時代にいくら探しても見つからない6番目のバイオリンムシ。いったいどんな姿なのか、出会える日を楽しみにしています。

(ミ)