image022 夏の夜、郊外の道を車で走っているときにヘッドライトの光の中に飛び込んできたり、明るい街灯の周りをひらひら飛び回ったりしている大きな白い蛾を見たことはありませんか。上越でもふつうに見られるオオミズアオは、なかまのオナガミズアオと共に日本を代表する美しい蛾として知られています。
オオミズアオは標本を見ても美しいものですが、できれば自然の中で、自然な姿を見ることをおすすめします。ハネを開いて静止していると、ふわっとした青白色のハネとその1枚1枚に印された4つの黄色の斑紋、体の上まで通る鮮やかな赤褐色のライン、そして全体のフォルム。 人によって評価は変わるかもしれませんが、私にとっては最高の蛾です。
こんな素晴らしい生き物を蛾だからということでよく見もせずに遠ざけてしまうとしたら、とてももったいないことだと思います。
でも、私もエラそうなことは言えません。小さい頃の思い出は、夜、カブトやクワガタがやって来るお気に入りの灯りの下にいつもこの蛾がいっしょにいて気味が悪かったことですし、学生になって昆虫採集を始めたころは蝶に夢中で他の虫は目に入らず、その後甲虫やいろんな虫に興味が広がってからもがなぜか蛾には関心がありませんでした。
オオミズアオが好きになったきっかけは、世界の昆虫の本で見たオオオナガヤママユ(上写真の右下。横にあるのはその蛾の銀色の繭)の絵でした。アフリカのマダガスカル島にすむというこの巨大な蛾の姿に感動していろいろ調べてみると、東南アジアにもちょっと小ぶりだけれど同じくらいかっこいいオナガヤママユ(Actias maenas)というのがいて、しかも同じなかまが日本にもいることがわかり、それがオオミズアオ(Actias aliena)でした。気がつけば憧れのActias の一員がほんの近くにいたのです。そこで改めて見直したオオミズアオは、熱帯にすむオナガヤママユなどと比べると色も形もかなり控えめですが、でも決してひけは取らず、いかにも日本的な上品な美しさをもっていました。
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その頃からずっと、私は世界の長い尾(尾状突起)を持つヤママユ類を蒐集しています。
アジアを中心に多くの種類がいるActias の他にもいくつかのグループがあって、長い尾を持つヤママユというのはほぼ世界中で見られます。そしてそれぞれが個性的ですばらしい魅力にあふれています。いくつか写真を載せておきますのでご覧ください。
ところで、きれいな蛾を紹介したついでに、昆虫教室などでよく質問される「蝶と蛾の違い」についても書いておきます。 簡単に言ってしまうと、両者に決定的な違いはありません。日本産に限れば触角の形などでちゃんと区別できますが、世界では、ということになるとはっきり分けられないものも出てきますし、実際蝶と蛾を区別していない国もけっこうあるそうです。
ですから、もし蝶は好きだけれど蛾は嫌いという方がおられたら、これからは蛾というものはいなくて毛虫も含めてすべて蝶なんだと思えば自然散策がもっと楽くなるかもしれません。

(ミ)