image023 稲刈りも終わりに近づいた9月下旬のこと、三和から牧方面へ車を走らせていると遠目にも鮮やかな濃いピンク色の花をつけている植物が目に入りました。
近づくとイヌタデの立派な一群、草刈り後に.芽を出して、これまで大きく育ったものと思われます。土の肥えた場所のせいか葉の緑も濃く、そのまま根元から刈り取って花束にしたくなるような見事な株でした。
小さな花がビッシリと着いた花穂は甘いキャンディーか粟菓子を連想させます。一般的にはイヌタデの名前よりアカマンマ、アカノマンマの名のほうが広く通用しているようですが、このほかにもオコワグサ、アズキノマンマなどの方言が各地で記録されており、その名が粒々の小花を赤飯やご飯に見立てて子供がままごと遊びをしたことから付いたものというのはたやすく理解されるところです。

ちなみに私の「ままごと」の記憶の中では側溝にあったミゾソバ(方言はウシビタイ)の花を白いご飯として使っておりましたが。
イヌタデの花は長さ2mmほどのがく片が重なり合った小さな壺のような形をしています。その色はつぼみから実がなるまでずっと紅色のままで長い間花を.楽しむことができ、晩秋には紅葉してよりその美しさを発揮します。

赤まんまの咲うづめたる野のおもて
不意に揺らぎてしづまる空気       宮 柊ニ

ところで植物の名前によく使われるイヌ…..という言葉は ツマラナイ とか 役立たず という意味につかわれますが、ことイヌタデに関しては当てはまらない気がします。群がり咲く花には独特の風情があり、秋の野草の中でも上位にランクされること間違いなし、似た種類にハナタデ.というのがありますが、名前に反して花はまばらで色も薄く目立ちません。名を入れ替えたいくらいです。

イヌタデを含む蓼の仲間は種類が多く30種以上が日本に生育しています。その中には染料の「藍」の原料となるタデアイや葉や実を食用とするヤナギタデ(真蓼、本蓼)も含まれます。
このヤナギタデの葉は非常に辛く、磨り潰して酢と混ぜて作る「蓼酢」は香辛料として料理に使われますが、「蓼食う虫も好き好き」という言葉もこれから来ているのだそうです。
また子葉の紅色のものは刺身のツマとして利用されています。

ただ残念ながら有用植物としてはこの二種くらいで、ほかはすべていわゆる田畑の雑草として扱われます。江戸時代の本草書などではこの二種以外の蓼はすべて「馬蓼」と切って捨てています。
しかし雑草という概念も元はといえば人間がつくったもの。
その付き合いは人の歴史が始まって以来の長きにわたります。除草剤で駆除することだけを考えず、それらを「見て楽しむ」ということもあってよいのではないでしょうか。

日頃、雑草防除に忙しい耕作者の方々も、なにげなく目にしたイヌタデやツユクサといった雑草の可憐な花に慰められたり疲れを忘れたりといった経験は必ずあるのではないかと思うのですが。

(ハ)