201506-14

マイヅルテンナンショウ 変な名前….と思われた方が大半でしょう。漢字で書くと「舞鶴天南星」。舞鶴は産地の地名ではなく、その草姿が「羽を広げ、首を伸ばした鶴」のように見えるところからつけられた名前で、天南星はこの仲間の中国名。漢方薬の原料として古くから知られています。

日本では九州、四国、本州の所々で産地が報告されていますが、新潟県では元上教大教授の長谷川先生が上越市内で発見されたのが唯一の記録という貴重な植物です。
どのような図鑑、文献を見ても日本海側の分布は載っていないということからも、これが大変な記録であることがわかります。
10年近く前になりますが、産地に案内していただいた時のこと、小さな川の氾濫原の雑木林の中に高さ80cmほどでしょうか。ひっそりと若竹色の「鶴」がそこにたたずんでおりました。その感激と興奮、人生でそう何度もあるものではありませんでした。

 不思議な形の花をつけるこの植物。私達になじみ深い里芋や蒟蒻に近い仲間で、「マムシグサ」というグループに属しています。主にヒマラヤから中国、朝鮮半島を経て日本まで広く見られ、東の端にあたる我が国で大きな進化を遂げ、50種以上が記録されています。今回取り上げた種を含めてこの仲間の大きな特徴はなんといってもその独特な花の形でしょう。

サトイモ科というグループの花には「花びら」や「がく」といった普通の花につきものの器官はなく花芯を取り巻くおしべとめしべだけ、あとはミズバショウの花にみられるような「苞」(仏炎苞)によって包まれているという形です。
花屋さんで売られている「カラー」の開いている部分の先が伸びて花の中心に覆いかぶさっている姿といったらわかりやすいでしょうか。その形がさまざまで、加えて中心から突き出ている蛇の舌のように見える部分(付属体)の変化が相まって摩訶不思議な形を作り出します。まさに千変万化、精巧な工芸品のようではありませんか。スッキリとした緑色系の花が多いのも魅力です。

201506-15

マイヅルテンナンショウは珍種ですが、仲間のウラシマソウやマムシグサなら、そこかしこの雑木林や土手などでごく普通に見かけます。ウラシマソウはその長い付属体を浦島太郎の釣糸にたとえたもの。マムシソウは花の形と葉鞘のまだら模様を蛇に見立てたものですが、葉と花序のバランスが絶妙な形をしています。
この仲間の花が「蛇」を連想させるのはどこでも一緒らしく、中国の本草書「本草綱目」に「その花の形は蛇頭に似る」とあり、江戸時代の園芸書に「蛇頭草」が出ていますが、これはマムシグサを指すと思われます。英語でも 「コブラ リリイ」など すべて蛇のイメージ、良い印象ではなさそうです。
 でも、でも実は筆者、個人的にこの仲間が大好きなのです。現在 外国産含め何種類か栽培しています。だれか一緒に「マムシソウ愛好会」を作りませんか?…….だれもいませんか、ヤッパリ。

(ハ)