20140607-15

 「夏が来れば思い出す。はるかな尾瀬 遠い空…..」50代以上の人なら大抵知っていると思われるこの歌、「夏の思い出」。昭和24年にNHK ラジオ歌謡として放送されると、江間章子さんのロマンあふれる詞が人気を博し教科書にも載るほどの人気歌謡となりました。

 三県にまたがる大湿原 尾瀬 を代表する花としてのミズバショウ、この歌詞によって初めてその名前を知った人も数多かったのではないでしょうか。
日本では本州の中部から東北、北海道のような寒地にしか分布していないこの植物、往時はそんなに簡単に見られるということは無かったと思われるのです。私も尾瀬には何度か行きましたが、季節の関係で、まだそこでのミズバショウの花は見ておりません。
それだけにそんな珍しい植物が、近くの山で見られると聞いたときは驚きました。場所は滝寺、岩木、国府といった高田西部の丘陵地、いずれも清水が湧き出ているような土地で、大昔、今よりもズッと寒かった時代の生き残りとして細々と余命を保っている….という感じでしょうか。

 ちなみに今でも残っているのは保護地に指定されている滝寺の群生地だけ、あとは道路や溜池工事で消滅しています。
私が最初にこの花に出会ったのは国府の田んぼの脇の湿地でした。
クラブの顧問の先生と何人かの仲間で見に行ったのを覚えています。株数は多くありませんでしたが、初めて見る憧れの美しい花に感激しました。

 ミズバショウの花で花弁のように見えるのは実は葉の変化したもの、仏像の光背をイメージして「佛炎苞」と呼ばれる部分。純白の小人の帽子か女の人のマントのフードのようです。本当の花は真ん中の黄色い棒状の部分で、花の終った後は太く大きくなって、まるで翡翠色の「鬼の金棒」といった形になり、葉は長さ
60cm にも巨大化します。

 ミズバショウの名前は、湿地にあって、花の後大きく生長する葉の様子を芭蕉の葉に例えたもので、文献では今から280 年ほど前、八代将軍吉宗の時代に書かれた園芸書に載っているということです。
方言は意外と少なく、新潟や東北地方でウシノシタ、ベコノシタ、ヤマタバコなどその大きな葉から連想されたものがほとんど。
一方、ほとんど実物を見ることのない江戸や京都、関西地方では本の記載からのミズバショウの名が早くから定着したものと思われます。

 ところでミズバショウについてとかく話題となるのは、その花の香りです。
よい香りというものから、悪臭というものまで諸説紛々としています。
私の体験ですが、葉をちぎったりすると、確かに異臭はしますが、正直、花となると記憶がないのです。(鼻があまり良くないということもあるのでしょうが)
英語では近似種を「スカンクのキャベツ」と呼ぶとのこと。

 ザゼンソウなど、この仲間にはあまり良い香りの花は少なく、この点では悪臭説に分がありそう。
ですが、人の感覚というのは千差万別。ここはやはり歌の通り「夢見て匂っている花の香り」というのが真実ではないでしょうか。

(ハ)