2014-04-7

 春先に林の中の道を歩いていると、田んぼやため池の水の中に白いアケビの実のようなものがあるのが目につきます。どこにでも普通にあるのでご存知の方も多いと思いますが、それはクロサンショウウオの卵塊です。 サンショウウオと聞くと巨大なオオサンショウウオを思い浮かべる方も多いと思いますが、あれは世界的に見ても例外的な存在で、ふつうのサンショウウオは体長20 センチ以下とずっと小型で姿もほっそりしています。 日本では18 種類、新潟県からは5 種類が知られていて、この辺で普通に見られるのはクロサンショウウオです。

サンショウウオの仲間は、似た姿をしているイモリと比べると知名度が低く、実物を見たことがあるという人もあまりいないようです。成長すると水辺から離れて林の中でひっそりと生活しているため、目につく機会が少ないのでしょう。つるっとした頭につぶらな瞳の可愛らしい生き物です。 クロサンショウウオを見たいと思ったら、春先に見つけた卵塊を採集して飼育してみるのが簡単です。

卵塊はいくつもの房になっていることが多いのですが、それぞれにたくさんの卵が入っているので、持ち帰るのは1 房だけで充分です。その時に水底の泥も少し持ち帰りプラケースに入れて浅く水を張って卵塊を入れておくと、そのうちに小さな仔がたくさん出てきます。しばらくは泥中から発生する微生物を食べさせておいて、少し大きくなって来たらアカムシなどの生餌(ペットショップで冷凍品も売られています)を与えて育てます。 幼体のうちは、ペットとして人気のウーパールーパーにそっくりな形をしています。 と言っても、本当はウーパールーパーの方が、おとなになっても幼体の姿のままというサンショウウオ界の変わり者なのですが。大きく育ち、外に出ていた鰓がなくなり姿もほっそりとした姿になると陸地に上がってきます。

成体の飼育はなかなか難しく、特に高温に弱いため、室内では保冷の設備が必要となります。 ですから、そこからの飼育に自信を持てない方は、成体の姿を見られたところで故郷の水辺に帰してあげたらいいと思います。

ところで、私は今でも時々、小さな子供のころに見た不思議な光景が頭に浮かびます。 毎年夏になると祖母が湯治に行っていた松之山温泉で、宿の裏山の沼で見た「サンショウウオのようなもの」です。 曇っていたのか、それとも夕方だったのか、全体に灰色の景色の中で、水辺から、うす青い水の底に遠くまで点々とそれらしい形が散らばっているのが見えました。 その幻想的なイメージが子供心に焼き付いていて、大人になってからもことあるたびに思い出すのです。

その後、行って確認しようと思えばいくらでもできたのですが、一度もそこに行くことはありませんでした。 私にとって、幼いころのその記憶は失くしたくないものなので、たぶんそれで正解なのだと思います。

(ミ)